子どもとの関わり
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放デイで子どもに暴言を言われた…言葉が刺さった日の立て直し方と、返し方の考え方【現場目線】

子どもに暴言を言われた日に 返し方の考え方5つ
daichi

「きらい」「あっち行って」。

片づけの声をかけたら、そう返ってきた。

帰りの支度のときには「死ね」と言われた。

その場では笑って流したつもりでも、家に帰ってからその言葉だけが残っている。

叩かれたなら、痛いと言えます。

でも言葉には、見える傷がありません。

「子どもの言うことだから」と言われると、刺さった自分のほうがおかしい気がしてきます。

同じ悩みの相談は、知恵袋にもいくつも残っています。

それなのに、言われた側の職員に向けて書かれた記事は、ほとんど見当たりません。

この記事は、言われた側のあなたに向けて書きます。

先に結論

① 刺さるのは、あなたが弱いからではありません。

② 言葉の中身より、言われる直前に何があったかを見ます。

③ 言い返さないのは我慢ではなく、あなたを守るための線です。国の手引きに理由があります。

④ 返し方は「言葉の中身に答えない・短く区切る・事業所の方針が先」。

⑤ 言われた日は、言葉をそのまま記録に残して、1人で持ち帰らない。

わかば
わかば

だいち先生、今日「きらい、あっち行って」って言われて…。
笑ってごまかしたんですけど、帰りの電車でずっと思い出してます。

だいち
だいち

叩かれたら痛いって言えるのに、言葉だとそれが言いにくいよね。
でも、刺さったなら刺さったでいいんだ。
今日はそこから話そう。

言葉は、なぜ持ち帰ってしまうのか

叩かれた痛みは、時間がたつと引いていきます。

言葉は違います。

頭の中で、何度でも再生できてしまいます。

しかも「きらい」「死ね」は、あなたという人に向けた形をしています。

だから、その場の出来事ではなく、自分への評価として受け取ってしまいやすいのです。

刺さりやすい言葉の3つの形

① 存在を遠ざける言葉 「きらい」「あっち行って」「来ないで」

② 見た目や人柄に向く言葉 「ババア」「くさい」「うざい」

③ 生き死にに触れる言葉 「死ね」「消えろ」

どれも強い言葉です。ただ、あなたの価値を決める言葉ではありません。

刺さるのは、あなたが弱いからではありません。

その子を真剣に見ている人ほど、言葉を正面から受け取ります。

言葉の中身より、その直前を見る

言われた言葉の意味を何度考えても、答えは出てきません。

見るのは、言われる前に何があったかです。

暴言の直前によくある場面

  • やめる・終わる場面 遊びの終わり、帰りの支度
  • 負けた・うまくいかなかった直後 ゲームの勝ち負け、作ったものが崩れた
  • 止められた・注意された直後
  • 思っていたことと違った 予定の変更、順番が回ってこない
  • 人や音が多い時間帯

これは原因を決めるための表ではありません。

同じ子でも日によって違います。

「今日はどれに近かったか」を見るための目安です。

「きらい」は、あなたを嫌っているという意味だけとは限りません。

「やめたくない」「悔しい」「嫌だった」が、そばにいた大人に向かって、手元にある強い言葉で出てくることがあります。

国の放課後等デイサービスガイドラインには、大人の役割がこう書かれています。

ガイドラインの記述

「自身の感情が崩れたり、不安になった際に、大人が相談にのることで、安心感を得たり、自分の感情に折り合いをつけたりできるよう『安心の基地』の役割を果たせるよう支援する」

感情が崩れたとき、そばにいる大人がそれを受け止める場面が想定されています。

言葉があなたに向いたのは、あなたがそばにいたから、という場合もあります。

中学生・高校生の場合は、思春期の特徴としてこうも書かれています。

ガイドラインの記述(おおむね13歳以降)

「こうした戸惑いと親からの自立を目指した一連の動きは、反抗的あるいは攻撃的な態度として表れることも多く、家族を含め周囲の大人の対応によっては情緒的・精神的に不安定となる危険性がある」

年齢によって、言葉の出方も変わるということです。

叩く・噛むといった行動の直前の見方は、叩かれたときの記事で3行メモの形にまとめています。

わかば
わかば

私が嫌われてる、って決めつけてたかもしれません。

だいち
だいち

嫌われているかどうかは、その一言では決まらないよ。
でも「何があった直後か」は、見れば分かる。
分かるものから見ていこう。

言い返さないのは、あなたを守るため

何度も言われると、言い返したくなります。

イラっとするのは自然なことです。

ただ、ここにははっきりした線があります。

国の「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」には、心理的虐待がこう定義されています。

手引きの記述

「障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応又は不当な差別的な言動その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと」

具体的な例として「怒鳴る、罵る」「日常的にからかったり、『バカ』『あほ』『死ね』など侮蔑的なことを言う」が挙げられています。

※この手引きの対象には障害児通所支援事業(放デイ・児童発達支援を含みます)が入っています。ここでいう障害者には18歳未満の者も含まれます。

子どもに言われた言葉を、そのまま返したとします。

その言葉は、手引きに例として挙がっている言動に当たる可能性があります。

だから、言い返さないのは我慢ではありません。

あなた自身を守るための線です。

同じ手引きには、こうも書かれています。

手引きの記述

「職員が一人で悩みや問題を抱え込んで、孤立することを防ぎ、職員同士が支え合う風通しのよい職場づくりを進めることが虐待防止につながります」

「虐待が起きる状況として、『思わずカッとなって、叩いてしまった』などのように、衝動的な怒りの感情が要因になる場合があります」

イラっとした気持ちを、1人で抱え続けないことです。

それが、あなたとその子の両方を守ります。

わかば
わかば

正直、何回も言われると言い返したくなってました…。

だいち
だいち

そう思った自分を責めなくていい。
思うのと、言うのは別だからね。
思った日は、誰かに話す日なんだ。

その場での返し方は、事業所の方針が先

返し方の正解は、その子によって違います。

個別支援計画(その子に何をどう支援するかを書いた、事業所の計画書)に対応が書いてあれば、それが最優先です。

そのうえで、その場のやり取りを大きくしないための考え方を並べます。

返し方の考え方5つ

  • ① 言葉の中身に答えない 「きらい」に「先生は好きだよ」「そんなこと言わないで」と返すと、言葉のやり取りが続きます。
  • ② 反応を小さく、短く 大きく驚いたり、長く説明したりしません。ひとことで区切ります。
  • ③ 直前の気持ちに言葉を当ててみる 「やめたくなかったね」「悔しかったね」。当たっていなくても構いません。
  • ④ 距離を取っていい その場を少し離れる、ほかの職員に代わってもらう。
  • ⑤ 伝えるなら、落ち着いてから短く 「その言葉を言われると、先生はつらい」。責める言葉にしません。

どれも「こうすれば言わなくなる」方法ではありません。

その場のやり取りを大きくしないための考え方です。

その場で使いやすい言い方の例

「やめたくなかったんだね」

「悔しかったね」

「あとで話そう」

「その言葉は、先生はつらいな」(落ち着いてから)

わかば
わかば

「先生は好きだよ」って返してました…。

だいち
だいち

優しい返し方だよ。
ただ、言葉のやり取りが続くと、その子も引っ込みがつかなくなることがある。
短く区切って、その前の気持ちのほうに言葉を向けてみて。

言われた日にやる3つ

その日のうちに

  • ① 言われた言葉を、そのまま記録に書く 「暴言を吐いた」ではなく「『きらい』と言った」。直前の場面と一緒に書きます。
  • ② 終わりの打合せで、1行だけ共有する 「片づけの声かけのあとに『きらい』と言われました」。それだけで十分です。
  • ③ 翌日は、前の日の言葉を持ち出さずに始める 「おはよう」から普通に入るほうが、お互いに入りやすいことがあります。

②は、ガイドラインにも書かれていることです。

ガイドラインの記述

「支援終了後に職員間で打合せを実施し、その日の支援の振り返りをし、こどもや家族との関わりで気づいた点や、気になった点について職員間で共有する」ことが重要とされています。

言われたことを共有するのは、弱音ではありません。

その日の支援で気になった点の共有です。

記録の書き方の例

⭕「片づけの声かけのあと、職員に『きらい、あっち行って』と言い、部屋の隅に移動した。5分後、自分からブロックの箱を棚に運んだ。」

⭕「すごろくで負けた直後、職員に向かって『死ね』と言った。職員が『悔しかったね』と伝えた。その後その場に座り、次の回には参加した。」

❌「暴言を吐いた」「反抗的だった」 何を言ったのか、直前に何があったのかが残りません。

言葉をかぎ括弧でそのまま書くのは、その子を責めるためではありません。

次に同じ場面に立つ職員のためです。

記録の言い方は支援記録の例文100選にも場面別の例があります。

保護者に伝えたくなったとき

何度も続くと、保護者に強く言いたくなることがあります。

知恵袋にも、毎回ひどい言葉を言われて限界で、保護者にきつい口調で連絡したくなる、という職員の相談がありました。

その気持ちは、おかしくありません。

ただ、伝えるかどうか、どう伝えるかは、あなた1人で決めることではありません。

管理者や児発管(児童発達支援管理責任者。支援の計画をつくる責任者)と相談して、事業所として決めます。

伝える場合も、気持ちではなく記録で伝えます。

「何を言ったか」と「直前に何があったか」が残っていれば、責める話ではなく、一緒に考える話にできます。

送迎のときに何を話すかは、送迎で保護者と何を話すかにまとめています。

それでも続くとき

同じ子から毎日のように言われて、出勤前から気が重い。

そうなっているなら、あなたの受け止め方の問題ではありません。

「ここでは言われるのが当たり前」と言われることもあります。

子どもから強い言葉が出る場面は、どの職場でも起こり得ます。

でも、それを1人で受け止め続けるのが当たり前、ということではありません。

手引きでも、職員が1人で抱え込まないような職場づくりが、虐待防止の取り組みとして挙げられています。

相談していいサイン

  • その子の顔を見ると、体がこわばる
  • 言われた言葉が、休みの日まで頭から離れない
  • 言い返しそうになる日が増えてきた
  • 報告しても「気にしないで」で終わる

1人で対応を担っているなら、担当や配置の相談をしていい話です。

眠れない・食欲がない状態が続くときは、早めに医療機関に相談してください。

心の不調と労災の考え方は職員がケガをしたときの記事に、対応したあとの自分の扱い方は癇癪・パニック対応がつらいときの記事に書いています。

よくある質問

Q. 「子どもの言うことだから気にしないで」と言われました。

A. 気にしないで済むなら、誰も困っていません。気になったことを言葉にして共有するのは、職員として正しい動きです。

Q. 暴言を言ったら、叱ったほうがいいですか。

A. 叱るかどうかは、事業所の方針とその子の計画によります。1人で決めずに、児発管や管理者に確認してください。

Q. 言われても平気そうな先輩がいます。私が弱いのでしょうか。

A. 平気に見えるのと、平気なのは違います。「言われたとき、どうしていますか」と聞いてみてください。言われた日の扱い方を、先輩なりに持っていることが多いです。

Q. ほかの子の前で言われて、恥ずかしかったです。

A. 恥ずかしさは、あなたの落ち度ではありません。周りの子の様子も含めて、終わりの打合せで共有しておくと安心です。

Q. 自分にだけ言ってくる気がします。陰で「あの先生がきらい」と話しているのも聞こえました。

A. 理由を1人で探すと、自分の言動を責める方向に考えがちです。いつ、どの場面の直前に、誰に言ったのかを記録して、職員の間で共有してください。ほかの職員にも同じことが起きているかどうかは、共有して初めて分かります。

Q. 新人で年も近く、なめられて注意ができません。

A. 注意する役を1人で引き受けなくて大丈夫です。どの場面で誰が声をかけるかは、事業所として決めておくことです。「この場面、どう声をかけていますか」と先輩や児発管に聞いてみてください。

Q. つい言い返してしまいました。

A. 気づいた時点で、管理者に伝えてください。隠すより、伝えて一緒に振り返るほうが、あなたもその子も守られます。

まとめ

この記事のポイント

  • ① 刺さるのは、あなたが弱いからではありません。言葉はあなたの価値を決めません。
  • ② 見るのは言葉の中身より、言われる直前に何があったか。
  • ③ ガイドラインには、大人が「安心の基地」の役割を果たせるよう支援する、と書かれています。
  • ④ 言い返さないのは我慢ではなく、あなたを守る線。手引きには「バカ」「あほ」「死ね」などの侮蔑的な発言が、心理的虐待の例として挙がっています。
  • ⑤ 返し方は、中身に答えない/短く区切る/直前の気持ちに言葉を当てる。事業所の方針が先です。
  • ⑥ 言われた日は、言葉をかぎ括弧のまま記録し、打合せで1行共有する。
  • ⑦ 保護者に伝えるかは、1人で決めない。
だいち
だいち

言われた言葉を、その日の夜まで持ち帰ったのは、その子のことを本気で見ていたからだ。
言い返さずに、ここまで読んだ。
それだけで、今日のあなたはちゃんと線の内側にいる。
今日のあなたに、はなまる。

出典

こども家庭庁「放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月)」(PDF)

厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き(令和6年7月)」(PDF)

※記事中の場面と記録例は、説明のための一般的な例です。実際の対応は、個別支援計画と勤務先の方針に合わせてください。

1人で抱えないために

▶ 相談できる先輩がいないとき 聞く相手を4つに分ける方法をまとめています。

▶ 子ども同士のけんかの仲裁 間に入るときの順番と、あとの関わり方です。

▶ 負けると怒る子への対応 「負ける練習」より、勝ち負けの出方を変える4つを書いています。

▶ 放デイ職員の悩み まとめ 6つに分けて、いまのしんどさから読める地図です。

▶ 子どもに怒鳴ってしまった日 自分を責めすぎず、明日やること3つを書いています。

▶ 言うことを聞いてもらえないとき 「なめられている」と考える前に見る3つを書いています。

▶ 支援員のミカタの公式LINE 「こんな場面で困った」を送ってもらえれば、記事にすることがあります。

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