放デイの癇癪・パニック対応がつらい…対応した「あと」の自分を守る方法【職員向け】
癇癪やパニックの対応をしたあと、手が震えていた。
帰り道で、あの場面を何度も思い出した。
自分の対応は、あれで合っていたんだろうか。
そう思って検索したのに、出てくるのは「まず安全を確保しましょう」という手順の説明ばかりだった。
もっと下まで見ると、今度は保護者が事業所の対応に怒っている相談が出てきた。
——読むんじゃなかった、と思ったかもしれません。
この記事は、対応した側の職員に向けて書きます。
手順の話は短く済ませます。本題は「対応したあとの自分」です。
この記事で書くこと
① 検索してもあなた向けの記事が出てこない理由
② 現場の手順(ここは短く。すでに他でたくさん書かれています)
③ 対応したあと、自分に起きることと、その扱い方
④ 職場の方針と自分の感覚が食い違うときの考え方
⑤ 自分がケガをしたとき/もう限界のときにやること

…今日、パニックの対応をして、そのあとずっと胸がざわざわしてます。
手順は先輩に教わったとおりにやったつもりなんですけど。

手順どおりにやっても、ざわざわは残る。
それは失敗したからじゃないよ。
強い感情のそばに居続けたら、誰でもそうなる。
今日はその話をしよう。
検索しても「あなた向けの記事」が出てこない理由
癇癪やパニックの対応について検索すると、出てくる記事は大きく3種類です。
検索結果に並ぶ3種類
- ① 保護者向けの記事 わが子の癇癪にどう関わるか。家庭が前提です。
- ② 事業所が書いた記事 「うちではこう支援しています」という紹介。利用を検討する保護者に向けたものです。
- ③ 職員の悩みの相談 知恵袋やSNSに、答えのないまま残っています。
つまり「対応した職員が、そのあとどうすればいいか」を書いた記事が、ほとんどありません。
だから検索しても、しっくりこないのです。
あなたの探し方が悪いわけではありません。
さらに、しんどいことがひとつあります。
職員が「つらい」と入れて検索すると、保護者が事業所の対応に不信感を持った相談が上位に出てきます。
自分を責めている日にそれを読むと、刺さります。
あれは、あなたのことを書いた文章ではありません。
手順は、3つだけ覚えておけば足ります
ここは短く済ませます。すでにたくさんの記事が書いているからです。
そして本当に必要なのは、覚えることを減らすことです。
その場でパニックになった人間は、5ステップを思い出せません。
現場で実際に使える3つ
- ① まわりを片づける 止めようとするより先に、硬いもの・角のあるもの・他の子を離します。動かすのは子どもではなく環境です。
- ② 言葉を減らす 落ち着かせようとして話しかけるほど、情報が増えて処理しきれなくなることがあります。声をかけるなら短く、低く、少なく。
- ③ 終わりを待つ 止めるものではなく、終わるものとして扱います。終わったあとに責める言葉をかけないことのほうが、次に効きます。
具体的なやり方はその子ごとに違います。
個別支援計画(その子に何をどう支援するかを書いた、事業所の計画書)や引き継ぎに書かれている対応があれば、それが最優先です。
自己流を足す前に、まず事業所で決まっている方法を確認してください。
やってはいけないことだけ、はっきり書きます
押さえつける・閉じ込める・部屋から出られなくするといった行為は、身体拘束にあたる可能性があります。
緊急やむを得ない場合の手続きは制度上定められており、個人の判断で行うものではありません。
「先輩がやっていたから」で真似をしないでください。迷ったらその場で管理者・児発管(児童発達支援管理責任者。支援の計画をつくる責任者)に確認するのが、あなた自身を守ることにもなります。

止めなきゃ、と思って体が動いてしまいます。

その反応は自然だよ。
だからこそ事前に決めておくんだ。
「この子のときは自分は何をする係か」を、落ち着いているうちに聞いておく。
とっさの判断を減らすのが、いちばんの安全策になる。
本題① 対応したあと、自分に起きること
ここからが、この記事の中心です。
強い感情のそばに居続けたあと、体と心には反応が残ります。
よくあるものを並べます。
対応のあとに出てくるもの
- 手や足が震える/力が抜ける 緊張が切れたときに出ます。対応中は出ません。
- その場面を何度も思い出す 夜、布団に入ってから再生が始まります。
- 自分の対応を採点し続ける あのとき違う声かけをしていれば、と考えが止まらなくなります。
- その子に会うのが怖くなる 次の出勤日が近づくと気が重い。これを口に出せない人がとても多いです。
- 怒りが出てくる 子どもにではなく、助けに来なかった同僚や、体制に対して。
どれも異常な反応ではありません。ただし何週間も続く、眠れない、出勤できないという状態になっているなら、それは気持ちの問題ではありません。受診を検討してください。
特に伝えたいのは、4つ目です。
「あの子に会うのが怖い」と思ってしまう自分を、責めている人が多い。
福祉の仕事をしているのに、子どもを怖いと思うなんて。
そう思って、誰にも言えなくなります。
けれど、これは体が危険を覚えているだけです。
あなたの人間性の問題ではありません。

…正直、ちょっと怖いって思ってました。
そんなこと思う自分が、支援者に向いてないんじゃないかって。

言えたのが大きいよ。
怖いと思うのは、危険を正しく認識できてるってことだ。
怖くない人のほうが、実は危ない。
向いてないんじゃない。感じる力があるだけ。
本題② 対応した日にやる3つ
その日のうちに
- ① 事実だけを記録に残す 解釈や反省ではなく、何が起きたかを時系列で。これは自分を守る記録にもなります。
- ② 誰か1人に話す 同僚でも家族でも構いません。話す相手がいなければ、紙に書くだけでも違います。頭の中で反芻するのがいちばん残ります。
- ③ 帰り道に「終わった」と区切る 駅まで歩く、コンビニに寄る、なんでもいい。場所を変えることで区切りをつけるのは、気休めではなく実際に効きます。
逆に、やらないほうがいいこと
- その日のうちに「自分の対応の是非」を結論づけない 疲れているときの判断は、必ず自分に厳しくなります。
- ひとりで反省会をしない 振り返りは、翌日以降に人と一緒にやるほうが正確になります。
- 「次はうまくやる」と決意しない 決意が、次の場面のプレッシャーになることがあります。決めるなら手順であって、気持ちではありません。
記録の書き方に迷ったら、支援記録の例文100選に、行動を事実として書く型をまとめてあります。
「暴れた」「パニックになった」と書いてしまいがちな場面を、そのまま使える形に置き換えてあります。
本題③ 職場の方針と、自分の感覚が食い違うとき
ここが、いちばん相談の多いところです。
実際に現場でよく起きるのは、こういう場面です。
よくある食い違い
- 泣いている子に関わろうとしたら、「放っておいていい」と言われた
- 自分は距離を取りたいのに、先輩は正面から止めに入る
- 保護者に伝えるべきだと思ったのに、「報告しなくていい」と言われた
- 対応の方針が職員ごとにバラバラで、誰に合わせればいいか分からない
こういうとき、自分が間違っているのかと考え込んでしまいます。
整理のしかたを書きます。
3つに分けて考える
- ① 方針の違い どちらも支援として成り立つが、考え方が違う。→ 理由を聞けば納得できることが多い。「どういう意図ですか」と聞くのは反抗ではありません。
- ② 説明のない指示 理由が示されないまま従わされている。→ 記録に残っている方針(個別支援計画)を確認する。書かれていれば根拠があります。
- ③ 明らかにおかしいこと 子どもの人権に関わる扱い、暴言、放置。→ これは食い違いではありません。
①と②は、聞けば解けます。問題は③を①だと思い込んでしまうことです。
③だと思ったときの相談先
まずは管理者・児発管。それが難しい場合、または管理者自身が関わっている場合は、事業所の外に相談先があります。
・市区町村の障害福祉担当課(指定・指導の窓口)
・都道府県の障害福祉主管課
・虐待が疑われる場合は市区町村の虐待防止センター(通報窓口)
通報は「訴える」こととは違います。疑いの段階で相談してよいことになっています。相談したこと自体を理由に不利益な扱いをすることは認められていません。
※窓口の名称と手順は自治体で異なります。お住まいの自治体のサイトで確認してください。

外に相談するって、大ごとにする感じがして…。

分かる。ほとんどの人がそう思って止まる。
でも窓口の人からしたら、相談は日常業務なんだ。
「これは相談していいことですか」と聞くところから始めていい。
本題④ 自分がケガをしたとき
噛まれた、引っかかれた、蹴られた。
パニックの場面では、意図せず起きます。
ここで多くの人が、こう考えます。
——子どもは悪くないんだから、大げさにしたくない。
その気持ちと、記録を残すことは、両立します。
ケガをしたときにやること
- ① その場で応急処置をする 噛まれた傷は見た目より深いことがあります。
- ② 必ずその日のうちに報告する 「たいしたことない」と自己判断しないでください。あとから腫れたときに困るのは自分です。
- ③ 日時・状況・部位を記録に残す 子どもを責めるためではなく、労災(労災保険。仕事中のケガの治療費などが出るしくみ)の手続きに必要だからです。
- ④ 受診が必要なら行く 業務中のケガであれば労災の対象になり得ます。
記録を残すことは、その子を加害者にすることではありません。環境を見直すための材料です。同じ場面が繰り返されているなら、それは個人ではなく体制の問題です。
労災の考え方と手続きは、放デイで職員がケガをしたら?に詳しくまとめました。
噛まれたときの手当てと気持ちの整理は、放デイで子どもに噛まれたら?にあります。
繰り返し起きているなら、それは「対応」の問題ではありません
同じ子で、同じ時間帯に、同じような場面が繰り返し起きている。
そのたびに自分の対応を反省している。
もしそうなっているなら、見る場所を変えてください。
記録を並べると見えてくるもの
- 時間帯 来所直後か、活動の切り替えか、帰りの前か
- 直前に何があったか 予定変更、音、人数、特定の相手
- 誰がいたか 職員の人数、その子と相性のある職員がいたか
- 週のどの曜日か 学校の時間割と連動していることがあります
1回ずつでは分かりませんが、2週間ぶん並べると傾向が出ます。
これは個人の力量ではなく、記録の力です。
傾向が見えたら、それを会議や引き継ぎに出してください。
「自分がうまく対応できない」ではなく、「この時間帯にこの条件が重なっています」と言えるようになります。
主語が自分から状況に変わると、話が前に進みます。

自分のせいだと思ってたことが、記録を見たら時間帯の問題だったかもしれないんですね。

そこに気づけたら大きい。
反省より、記録のほうが人を助ける。
今日のわかばさんに、はなまる。
よくある質問
Q. 対応中に体が動かず、固まってしまいました。
A. よくあることです。
動けなかったことより、そのあと誰かに伝えたかどうかのほうが大事です。
固まってしまうと分かっているなら、事前に「自分は他の子を離す係に回ります」と決めておく手があります。
Q. 先輩の対応が強引に見えます。指摘していいですか。
A. 個人を指摘する形は、たいていうまくいきません。
「あの場面、次はどう動けばよかったですか」と自分の動きを聞く形にすると、話ができます。
それでも子どもの安全に関わると感じるなら、管理者に相談してください。
Q. 保護者にどこまで伝えるべきですか。
A. 事業所の方針に従ってください。
判断に迷う場面は、あなたが一人で決めることではありません。
「これは連絡帳に書きますか、口頭で伝えますか」と確認するのが、いちばん安全です。
Q. もう続けられないかもしれません。
A. その気持ちが出ているなら、まず休んでください。
辞めるかどうかは、休んだあとで考えて間に合います。
「辞めたい」の正体4つに、切り分け方をまとめています。
まとめ
この記事のポイント
- ① 検索しても出てこないのは、職員向けの記事がほとんどないから。あなたのせいではありません。
- ② 手順は3つで足ります。環境を動かす・言葉を減らす・終わりを待つ。
- ③ 対応のあとに震え・反芻・恐怖が出るのは正常な反応。「あの子が怖い」と思う自分を責めないでください。
- ④ 職場と食い違ったら①方針の違い ②説明のない指示 ③明らかにおかしいことに分ける。③は相談先が事業所の外にあります。
- ⑤ ケガは必ず記録する。子どもを責めることと、記録を残すことは別です。
- ⑥ 繰り返し起きているなら、反省ではなく記録を2週間並べる。

今日、あなたはその場に居続けた。
逃げずに、そばにいた。
それができる人は、そんなに多くない。
手順が完璧だったかどうかより、そのことのほうが、ずっと価値がある。
書いた記録が事実だけになっているかは、記録チェッカーに貼れば数秒で分かります。「暴れた」のような主観の言葉を拾ってくれます。
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