負けると怒る子への対応|「負ける練習」より、勝ち負けの出方を変える4つ【放デイ職員向け】
カードが飛ぶ。いすが鳴る。
「もうやらない」と言って、部屋を出ていく。
残った子たちは、気まずそうにこちらを見ている。
ゲームは、そこで止まる。
この記事では、負ける練習を目的にせず、勝ち負けの出方を変えるやり方をまとめます。
先に結論
① 「負ける練習」を目的にしません。崩れる場面を増やすことになりかねません。
② 変えるのは勝ち負けの出方。運を入れる/チーム戦/点数を残さない/終わり方を先に決める。
③ 負けた瞬間に言葉を足しません。戻ってこられる形を残しておきます。
④ ガイドラインにあるのは「自己を肯定的に捉えられる機会を通じて」気持ちを調整していくこと。
⑤ 記録は「負けて怒った」ではなくどの形なら最後までいられたか。

だいち先生、負けるたびに崩れる子がいます。
慣れるまで、負ける経験を積ませたほうがいいんでしょうか。

その順番だと、崩れる回数が増えるだけになることがある。
先に変えるのは、ゲームのほうだよ。
「負ける練習」を目的にしない
保護者向けのQ&Aサイトには、家庭で「負ける練習」をしているという相談がありました。
回答は12件ついていて、それだけ迷う人が多いテーマだと分かります。
ただ、負ける場面をわざわざ作ると、うまくいかない回数が積み上がります。
国の放課後等デイサービスガイドラインには、こう書かれています。
ガイドラインの記述
「自分のできることや苦手なことなど、自分の行動の特徴を理解し、自己を肯定的に捉えられる機会を通じて、気持ちや情動を調整し、状況に応じた行動ができるように支援する」
遊びの段階としては「一人遊び」から「並行遊び」「大人が介入して行う連合的な遊び」を経て、「役割分担したりルールを守って遊ぶ協同遊び」へ、と示されています。
先にあるのは、肯定的に捉えられる機会のほうです。
勝ち負けのある遊びは、段階のいちばん後ろに置かれています。
勝ち負けの出方を変える4つ
① 運の要素を入れる
- 実力だけで決まると、勝つ子と負ける子が固定されます。
- サイコロ、くじ、じゃんけんを1つ挟むだけで、結果が読めない形になります。
- 「強い人が勝つ」から「やってみないと分からない」に変わります。
② チーム戦にする
- 個人戦は、負けが自分1人に集まります。
- 2〜3人のチームにすると、結果が分散します。
- メンバーは毎回変えます。固定すると、チームの中で言い合いが起きやすくなります。
③ 点数を残さない
- 得点を書き出すと、差が見える形で残ります。
- 勝敗を宣言せず、「終わり」とだけ言う回を作ります。
- 記録するなら、勝敗ではなく回数(「3回やった」)にします。
④ 終わり方を先に決める
- 「最後は全員でやる形にする」など、締めを決めておきます。
- 回数で終わると伝えます。「あと3回」は、盛り上がる前に言います。
- 負けた直後に終わると、その気持ちのまま帰ることになります。順番を考えます。
活動の条件を1つずつ動かす考え方は足すと減らすにまとめています。

手加減しているみたいで、いいのかなと思ってしまいます。

手加減じゃなくて、ゲームの設計だよ。
そもそも大人の遊びだって、運の要素が入っているものが多い。
実力だけで決まる遊びのほうが、めずらしいんだ。
それでも崩れたとき
その場の3つ
- 勝敗の話をしない 「まだ次があるよ」も、勝ち負けの話です。いったん外します。
- 場所を変える その場に置いておくより、いったん離れるほうが短く済むことがあります。
- 席を残しておく 荷物やカードをそのままにしておくと、戻る場所が分かります。
どこで待つかの決め方はクールダウンの場所にまとめています。
周りの子が巻き込まれたときはけんかの仲裁にあります。
戻ってきたとき
やらないこと・やること
- 振り返りから入らない 「さっきはどうだった?」は、負けた場面に戻す言い方です。
- 次の出番を渡す 「サイコロ振る人、お願い」など、役割から入ります。
- 戻ってきたことに触れる 「来たね」だけで十分です。
- 話すなら、帰りの前に短く 「次はチーム戦にしてみるね」と、こちらが変えることを伝えます。
勝ったときに騒ぐ子も、同じ話
勝ち負けにこだわる子は、負けたときだけ崩れるとは限りません。
勝って大きな声を出す、相手に言いにいく、という形になることもあります。
扱い方
- 勝敗を大きくしない 職員が勝者を大きく取り上げると、差がはっきりします。
- 役割で返す 「次の進行お願い」と、勝ったエネルギーを出番に変えます。
- 相手に言いにいく形だけ止める 喜ぶこと自体は止めません。
記録に残すこと
書き方の例
- 「トランプ。サイコロで手番を決める形にしたところ、最後まで座っていた」
- 「個人戦では途中で抜けた。2人チームにした回は、最後まで参加した」
- 「得点を書かなかった日は、終わりの場面で抗議がなかった」
勝敗ではなく、どの形のときに最後までいられたかを残すと、次の活動を組むときに使えます。
記録の言い回しは支援記録の例文100選にあります。
よくある質問
Q. 学校や家では勝ち負けのある場面があります。避けていて大丈夫ですか。
A. 避けるのではなく、順番を変えています。最後まで参加できた回数が増えてから、条件を戻していきます。
Q. ほかの子から「ずるい」と言われます。
A. 特定の子だけルールを変えると、そう見えます。全員に同じ条件(運を入れる・チーム戦)にするのが今回の方法です。
Q. 職員がわざと負けるのはどうですか。
A. 気づかれると、勝っても嬉しくなくなることがあります。手加減より、運の要素を入れるほうが続けやすい形です。
Q. 「勝ちたい」と強く言う子に、どう返しますか。
A. 否定しなくて大丈夫です。勝ちたい気持ちは、そのまま出番や役割に向けられることがあります。
Q. 毎回同じ子が崩れます。
A. その子の課題として書く前に、どの形なら最後までいられたかを2週間残してみてください。児発管に渡す材料になります。
まとめ
この記事のポイント
- ① 「負ける練習」を目的にしません。崩れる回数が増えることがあります。
- ② 変えるのは運・チーム・点数・終わり方の4つ。
- ③ 崩れたら勝敗の話をしない。席を残して、戻れる形にします。
- ④ 戻ってきたら、振り返りではなく次の出番から。
- ⑤ 記録はどの形なら最後までいられたかで残します。

勝ち負けでもめると、活動そのものをやめたくなる。
でも、やめる必要はない。
設計を変えれば、同じ遊びが最後まで続く。
今日のあなたに、はなまる。
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