放デイで保護者の前で子どもが荒れた…その場の3手と、あとで伝えるときの順番【現場目線】
お迎えの時間に、その子が崩れた。
床に寝転んで泣く。帰りの支度をこちらが持つと、投げられる。
目の前には、迎えに来た保護者。
ほかの家族も、少し離れたところで見ています。
「すみません」と言いながら、頭が真っ白になる。
帰ったあと、その場面が何度も浮かびます。
うちの子は、ここでいつもこうなのかと思われたかもしれない。
この先生は対応できない、と思われたかもしれない。
検索して出てくるのは、保護者に向けた癇癪の対応の記事ばかりです。
この記事は、見られた側の職員に向けて書きます。
先に結論
① その場は、説明より子どもが先です。保護者への言葉はひとことで足ります。
② そのひとことは、崩れる前に決めておきます。その場で考えると出てきません。
③ 見られて困るのは対応の中身ではなく、あとで何も説明がないことです。
④ 伝える順番は事実 → その場でしたこと → そのあとの様子 → 次にすること。
⑤ 伝えるかどうか、誰が伝えるかは事業所として決めます。1人で背負う話ではありません。

だいち先生、今日お迎えのときにあの子が崩れてしまって…。
お母さんの前で、私、何もできなくて。
ずっと『すみません』しか言えませんでした。

あの場面で頭が真っ白になるのは、めずらしくないよ。
見られていると、子どもより保護者のほうを見てしまうからね。
順番を決めておくと、少し楽になる。
その場は、説明より子どもが先
保護者が見ていると、まず説明したくなります。
ただ、説明をしている間、その子は待っています。
順番は、子ども・ひとこと・場所です。
その場の3手
- ① 子どもの安全を先にする 硬いもの、角のあるもの、ほかの子を離します。動かすのは子どもではなく環境です。
- ② 保護者にひとことだけ伝える 説明ではなく、いま何をしているかを言います。
- ③ 見られる範囲を狭くする ほかの家族やこどもから少し離れた場所に移ります。
手順そのものは癇癪・パニック対応の記事にまとめています。
ここでは、保護者が見ている場面に絞って書きます。
保護者へのひとこと(そのまま使える形)
「いま落ち着くのを待っています。少しお待ちいただけますか」
「先に静かな場所へ移ります。すぐ戻ります」
「あとでこちらからご説明します」
どれも状況の説明をしていません。いま何をしているかだけを言っています。
この3つのうち、どれを言うかを先に決めておきます。
その場で言葉を探すと、つい謝罪だけを繰り返すことになります。

「すみません」だけになってしまう理由が分かった気がします。

謝るのが悪いわけじゃないよ。
ただ、謝罪だけだと、何が起きているのか保護者に伝わらない。
「いま何をしているか」を1つ言うほうが、待ってもらいやすいんだ。
保護者が入ろうとしたとき
保護者がその場で叱ることがあります。
抱えて連れ帰ろうとすることもあります。
そのとき、職員が保護者の関わり方を評価する立場に立たないでください。
こちらから言えるのは、役割の分担だけです。
入ろうとされたときの伝え方
- いまは職員が対応すると伝える 「ここは私が見ますので、少し離れて待っていただけますか」
- 待つ場所を示す 「玄関の外/車でお待ちください」。場所があると、待ちやすくなります。
- ほかの家族の目から離す 順番を入れ替えて、先にほかの家庭に帰ってもらう方法もあります。
- 止めないほうがよい場面もある 保護者が声をかけて落ち着く場合もあります。危険がなければ、任せる判断もあります。
どれを選ぶかは、その子と家庭によって変わります。
その場の判断を1人で抱えず、あとで管理者に共有してください。
見られて困るのは、対応ではなく説明のなさ
保護者は、思っているより現場を見ています。
知恵袋には、保護者の側からこういう相談も残っています。
保護者の側の声(要旨)
- お迎えのたびに、その日の困りごとを報告されるのがしんどい。言葉が棘のように刺さって、帰り道で落ち込む。
- できないことばかりを言われてきた。家庭でもやれることはやっているのに、責められている気がする。
- お迎えのとき、外から教室の様子を見ている。自分の子にだけ職員がついているのが見える。
3件とも、荒れた場面そのものよりそのあと何を言われたかの話です。
だから、その場での説明より、あとでどう伝えるかが効いてきます。
国の放課後等デイサービスガイドラインにも、保護者との関わり方が書かれています。
ガイドラインの記述
「職員は、こどもや保護者の満足感、安心感を高めるために、提供する支援の内容を保護者とともに考える姿勢を持ち、こどもや保護者に対する丁寧な説明を常に心がけ、こどもや保護者の気持ちに寄り添えるように積極的なコミュニケーションを図る必要がある」
その場で完璧に説明することは求められていません。
求められているのは、あとから伝わる形にすることです。
あとで伝えるときの順番
伝える内容は、4つの順番で組みます。
伝える順番
- ① 事実 いつ、どの場面で、何が起きたか。
- ② その場でしたこと 職員が何をしたか。
- ③ そのあとの様子 落ち着くまでの時間、帰るときの様子。
- ④ 次にすること 同じ場面で試すことを1つだけ。
③を必ず入れてください。荒れた場面だけを伝えると、その子の1日がその場面だけになってしまいます。
電話で伝えるときの例
「本日の帰りの支度の場面でお時間をいただきました。おもちゃを片づける切り替えのところで、床に寝て泣く時間が10分ほどありました。」
「職員が近くで待ち、片づけを一緒に行いました。その後は自分で靴を履いて出られました。」
「次からは、片づけの5分前にお知らせしてから始めてみます。ご家庭で何か気になる様子があれば教えてください。」
やめておいたほうがいい伝え方
❌「すみませんでした」だけで終える 何があったのかが残りません。
❌「ご家庭では何かありましたか」から入る 原因を家庭に置いた質問に聞こえます。聞くなら、伝えたあとに。
❌ 特性や診断に触れる 「やっぱり切り替えが苦手ですね」は、職員が見立てを述べる形になります。
連絡帳で伝える場合の書き方は連絡帳の書き方に例文があります。
お迎えの立ち話で何を話すかは送迎で保護者と何を話すかにまとめています。
誰が伝えるかは、事業所が決めます
その日のうちに、管理者か児発管(児童発達支援管理責任者。支援の計画をつくる責任者)に上げてください。
ガイドラインには、連絡の体制についてこう書かれています。
ガイドラインの記述
「設置者・管理者は、事業所内でのトラブルやこどもの病気・事故の際の連絡体制について、事前に保護者と調整し、その内容について職員間で周知徹底しておく必要がある」
「設置者・管理者は、職員が行う保護者への連絡や支援について、随時報告を受けることや記録の確認等により、把握・管理することが必要である」
連絡は、あなた個人が判断して行うものではありません。
上げるところまでが、あなたの役割です。
車の中で込み入った話をするのは避けてください。
ガイドラインの記述
「職員からの虐待(特に性的虐待)は、密室化した場所で起こりやすいことから、設置者・管理者は、送迎の車内を含め、密室化した場所を極力作らないよう、常に周囲の目が届く範囲で支援を実施できるようにする必要がある」
自分の気持ちのほうも
見られた場面は、あとから何度も再生されます。
多くの場合、思い出しているのは子どものことではありません。
自分がどう見えたかのほうです。
その感じ方は、自然です。
ただ、保護者が見ていたのは「職員としてのあなた」で、人としてのあなたを採点していたわけではありません。
この受け取り方の整理は保護者クレームがつらいときの記事にも書いています。

見られたことばかり考えてしまって…。

それだけちゃんとやろうとしているってことだよ。
気にならない人は、そもそも思い出さない。
今日は、上げるところまでできたら十分だ。
次に同じ場面が来る前に決めておく3つ
お迎えの時間は、崩れやすい時間です。
終わりと切り替えが重なるからです。
だから、崩れてから考えるのではなく、先に決めておきます。
先に決めておく3つ
- ① 役割 誰が子どもにつき、誰が保護者に声をかけるか。
- ② ひとこと 保護者に言う言葉を1つだけ決めておきます。
- ③ 場所 落ち着くまでどこに移るか。人の目から離れて、かつ密室にならない場所。
①はガイドラインにも書かれています。
「支援開始前には職員間で必ず打合せを実施し、その日行われる支援の内容や役割分担について把握することが必要である」
同じ子で、同じ時間帯に繰り返しているなら、記録を並べてみてください。
時間帯や直前の場面をそろえて見る方法は癇癪・パニック対応の記事に書いています。
記録の書き方は支援記録の例文100選にも例があります。
よくある質問
Q. その場で謝ったほうがいいですか。
A. 「お待たせしています」で足ります。何に対して謝るのかは、事業所として整理してから決めます。その場の判断で責任の話をしないでください。
Q. ほかの保護者にも見られていました。
A. ほかの家庭に、その子の話をしないでください。聞かれたら「対応中でした」で十分です。
Q. 保護者が強く叱り始めました。止めますか。
A. 危険がなければ、その場で止めに入らなくて構いません。気になったことは、あとで管理者に共有してください。
Q. 荒れた原因が自分の声かけだった気がします。
A. 直前に何があったかを記録に残してください。原因を1つに決めるより、同じ場面が繰り返すかどうかを見るほうが、次につながります。
Q. 保護者から「家では荒れないのに」と言われました。
A. 家庭と事業所で様子が違うことはあります。どちらが本当かを決める話ではありません。「こちらではこの場面で崩れやすいです」と場面で伝えてください。
まとめ
この記事のポイント
- ① その場は子ども・ひとこと・場所の順番。説明はあとで構いません。
- ② 保護者に言うひとことは、崩れる前に決めておきます。
- ③ 保護者の側の声を見ると、つらいのはそのあと何を言われたかのほうでした。
- ④ 伝える順番は事実 → したこと → そのあとの様子 → 次にすること。③を必ず入れます。
- ⑤ 誰がどう伝えるかは事業所が決めます。上げるところまでがあなたの役割です。
- ⑥ 次に備えて役割・ひとこと・場所の3つを決めておきます。

見られた場面を、家まで持ち帰ったのは、ちゃんとやりたかったからだ。
その場で完璧に説明できなくていい。
子どもを先にして、あとで事業所として伝える。それで十分。
今日のあなたに、はなまる。
1人で抱えないために
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