放デイのヒヤリハットの書き方|反省文にしないための4項目と、責められない書き方【職員向け】
あと少しで、ぶつかるところだった。
階段で手が離れた。
送迎車のドアが、あと一歩で閉まるところだった。
——でも、何も起きなかった。
これ、書いたほうがいいんだろうか。
書いたら、自分が怒られるんじゃないだろうか。
検索しても出てくるのは、介護のヒヤリハット事例集や、保育園の報告書の書き方ばかりです。
この記事は、放デイの職員が、責められずに書くための型を書きます。
先に結論
① ヒヤリハットは反省文ではありません。次に同じ場面に立つ人へのメモです。
② 事故報告とは別物です。混同すると書けなくなります。
③ 書くと、自分が守られます。書かないほうが危ないです。
④ 書くのは4つだけ。いつ・何が起きかけた・どうして防げた・次にどうする。
⑤ 原因に「自分の不注意」と書かない。そこで検討が止まります。

だいち先生、今日ヒヤッとしたことがあって。
でも何も起きなかったので、書くか迷ってます…。

書いたほうがいい。
でも、たぶん「反省文を書かされる」と思ってるよね。
そこが違うんだ。
ヒヤリハットは、あなたを責める書類じゃない。
ヒヤリハットは、反省文ではありません
ここがいちばんの誤解です。
国のガイドラインでの位置づけを確認します。
ガイドラインでの扱い
こども家庭庁の放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月)では、設置者・管理者が、事故につながりそうなヒヤリ・ハット事例の情報を収集し、検証を行う機会を設けることとされています。
つまりヒヤリハットは集めて、みんなで検証するための材料です。
さらに、事業所の自己評価表の項目にも「ヒヤリハットを事業所内で共有し、再発防止に向けた方策について検討をしているか」が入っています。
個人の反省を集める仕組みではありません。
言い方を変えます。
あなたが書いたヒヤリハットは、事業所が「安全に取り組んでいる」という記録そのものになります。
書かないと、事業所側が困ります。
事故報告とヒヤリハットは、別物です
この2つを混ぜると、書くのが怖くなります。
分けて考えてください。
2つの違い
- 事故報告 実際に起きたときのもの。ガイドラインでは、事故が発生した場合、設置者・管理者が速やかに都道府県・市町村・家族等に連絡を行うこととされています。
- ヒヤリハット 起きなかったときのもの。事業所の中で共有し、再発防止を検討するためのもの。
※自治体への報告は、設置者・管理者の役割です。
あなたが直接どこかへ届け出るわけではありません。
あなたがやるのは事業所に報告することまでです。
報告の基準は、自治体で違います
ガイドラインには、どのような事故の場合に報告を求めているか、どのような方法で報告を求めているかは、必ず都道府県や市町村のホームページ等で確認するようにと書かれています。
つまり全国共通の線引きはありません。
「これは報告する事故か」を職員が1人で判断しないでください。迷ったら管理者に上げるのが正しい動きです。

自分で判断しなくていいんですね。

そこは判断しちゃいけないところなんだ。
報告するかどうかを決めるのは、あなたの仕事じゃない。
あなたの仕事は、見たことを正確に渡すこと。
書くと、自分が守られます
「書いたら責められる」と思って、書かない人がいます。
実際は逆です。
書くと起きること
- ① 記録が残る あとで似た事故が起きたとき、「前から危ないと言っていた」ことが形で残ります。
- ② 環境が変わる可能性が出る 1人が言うと個人の話になりますが、3件たまると場所や手順の問題になります。
- ③ 次の人が同じ思いをしなくて済む あなたが気づいた危なさを、次に入る人は知りません。
書かないと起きること
- 同じ場面が繰り返され、いつか本当の事故になります。
- そのとき、気づいていたのに黙っていた形になります。
- そして、次の人がまた同じところでヒヤッとします。
「大げさかな」と思う出来事ほど、他の職員も同じところで危ないと思っていることがあります。
書くのは4つだけ
様式は事業所によって違いますが、中身の骨組みは共通です。
この4つを埋めれば足ります。
この4つ
① いつ・どこで 時間と場所。「15時40分/玄関前」
② 何が起きかけたか 事実だけ。「◯◯さんが1人で外に出ようとした」
③ どうして防げたか 「近くにいた職員が声をかけて止まった」
④ 次にどうするか 「玄関の見守りを、送迎前は2人にする」
実際に書いてみます。
書き方の例
- ❌ 書きにくい例 「私の不注意で、◯◯さんが玄関から出そうになりました。次から気をつけます」
- ⭕ 書ける例 「15時40分、送迎の準備中。玄関前で◯◯さんが1人でドアに手をかけた。近くにいた職員が声をかけ、その場で止まった。送迎の準備が重なる15時半〜16時は、玄関に人が少なくなる」
下の例には「私が悪い」も「気をつけます」も入っていません。
それでも、次に何をすればいいかが分かります。
原因に「自分の不注意」と書かない
これがいちばん大事なところです。
原因の欄に「自分の不注意」「確認不足」と書くと、そこで検討が止まります。
止まってしまう理由
- 「不注意」が原因なら、対策は「気をつける」しかありません。
- 「気をつける」は、次の人には引き継げません。
- そして同じ場面が、また起きます。
自分を責めない書き方をするのは、ずるいことではありません。
次につながる情報にするために必要なことです。
代わりに、こう書きます。
原因の欄に書くこと
- 時間帯 「送迎の準備が重なる時間だった」
- 人の配置 「その場に職員が1人だった」
- 場所の作り 「玄関から死角になる位置だった」
- 手順 「誰が玄関を見るか決まっていなかった」
どれも変えられるものです。「不注意」は変えられません。

いつも「確認不足でした」って書いてました…。

みんなそう書くんだ。悪いことじゃない。
でもそれだと、あなたが我慢して終わりになる。
場所や時間のせいにしていい。そのほうが、次が変わる。
よくある場面
ガイドラインでは、事故の起きやすい場面として送迎、睡眠中、プール活動・水遊び中、食事・おやつ中などが挙げられています。
放デイでよく上がるものを並べます。
場面別に、書いておきたいこと
- 送迎 乗降時に道路側に出た/シートベルトが外れていた/人数確認のタイミング
- 玄関・外 1人で出ようとした/門扉が開いていた
- おやつ・食事 のどに詰まりかけた/他の子のものを口に入れかけた/アレルギーの確認
- 水遊び・入浴 目を離した時間があった/人数が合わなかった
- 室内 棚が倒れかけた/角にぶつかりかけた/床が濡れていた
- 子ども同士 手が出かけた/道具が飛びかけた
アレルギーや医療的ケアに関わる場面は、事業所の手順が最優先です。
この記事の型より、勤務先の決まりに従ってください。
書いたあと、どうなるのか
出したきり、何も返ってこないことがあります。
そうすると「書いても意味がない」と感じます。
本来の流れを知っておくと、どこで止まっているかが見えます。
本来の流れ
- ① 職員が書く 見たことを、その日のうちに。
- ② 事業所内で共有する 朝礼・終礼・掲示など。ここが自己評価表の項目に入っています。
- ③ 再発防止を検討する 「次はこうする」を決める。
- ④ 手順や環境を変える 人の配置、物の置き場所、声かけのタイミング。
止まりやすいのは②と③です。①だけやって終わっている事業所は少なくありません。
②で止まっているなら、書き方を少し変えると通りやすくなります。
止まらせないための一工夫
- 「次にどうするか」を具体的に書く 「気をつける」ではなく「送迎前の15分は玄関に1人つく」。決めやすい形にして渡します。
- 同じ場面が何件目かを添える 「玄関は今月3件目です」。数があると、話が個人から場所に移ります。
- 朝礼で1行だけ口に出す 紙は読まれないことがあります。声に出すと共有されます。
他の人が書いたヒヤリハットを読む
自分が書くだけでなく、読む側にもなってみてください。
いちばん学べる資料です。
読むと分かること
- その事業所で危ないのはどこか 場所と時間帯に偏りが出ます。
- 先輩がどこを見ているか 自分が見えていなかった視点が入っています。
- 自分が次に立つ場面の予習になる 同じ場面に入る前に読んでおくと、動きが変わります。
新しく入った人に、まず読んでもらうと早いです。
マニュアルより、その事業所のことが分かります。
書きにくい職場のとき
「書くと空気が悪くなる」職場があるのも、実際です。
そういうときの動き方を書いておきます。
書きにくいと感じたら
- 名前を出さない書き方にする 「職員が」で足ります。誰がやったかより、何が起きたかが情報です。
- 自分のメモには残しておく 様式に出せなくても、日付と場面を手元に残します。あとで説明できる形になります。
- 同じ場面が続くなら、まとめて出す 1件では言いにくくても、3件並べれば「場所の話」になります。
※それでも書けない空気が続くなら、安全管理そのものが弱い職場かもしれません。
すぐ辞める職場の特徴もあわせて見てみてください。
よくある質問
Q. 何も起きなかったのに書くと、大げさですか。
A. 大げさではありません。
何も起きなかったからこそ、落ち着いて書けるのがヒヤリハットです。
Q. 自分が原因のときも書くのですか。
A. 書きます。
ただし「自分が悪い」ではなく、何が重なったかを書いてください。
Q. 書いたのに何も変わりません。
A. 1件では動かないことがあります。
同じ場面が3件たまると、話が変わります。
日付と場面を残し続けてください。
Q. 事故になったときはどうすればいいですか。
A. まず子どもの安全を確保し、その場で管理者に報告してください。
自治体への報告や保護者への連絡は、設置者・管理者の役割です。
職員がケガをした場合は労災の記事もあわせてどうぞ。
まとめ
この記事のポイント
- ① ヒヤリハットは反省文ではありません。集めて検証するための材料です。
- ② 事故報告とは別物。自治体への報告は設置者・管理者の役割です。
- ③ 報告の基準は自治体で違います。1人で判断せず、迷ったら上げてください。
- ④ 書くのは4つ=いつ・何が起きかけた・どう防げた・次にどうする。
- ⑤ 原因に「不注意」と書かない。時間帯・配置・場所・手順で書きます。
- ⑥ 1件で動かなくても、3件たまると話が変わります。

「危なかった」と気づけたのは、見ていたからだ。
見ていない人は、ヒヤリともしない。
書き残した数だけ、次の人が助かる。
今日のあなたに、はなまる。
出典
こども家庭庁「放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月)」(PDF)
※様式・報告の手順・報告の基準は事業所と自治体によって異なります。実際の運用は勤務先と自治体の情報で確認してください。
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