物を投げる子への対応|止めにいく前に「人をどける」その場の3手と、飛ぶ物を減らす環境の変え方
いすが倒れる音。
次の瞬間、何かが飛んでくる。
窓に当たりそうで、思わず取り上げにいく。
——そこから、もっと大きくなった。
この記事では、物を止めるより先に人をどける動き方をまとめます。
先に結論
① その場は射線から人をどけるのが先。物を追いかけません。
② 取り上げにいかない。取り上げると、次に手が伸びる物が大きくなることがあります。
③ 子どもを変える前に、飛ぶ物のほうを減らします。
④ 押さえる形は身体拘束の線があるので、個人の判断でしません。
⑤ 記録は「投げた」ではなく直前に何があったか。

だいち先生、物が飛んできたとき、つい取り上げにいってしまいます。
それで余計に大きくなりました。

よくある流れだよ。
物を止めにいくと、その子と自分の1対1になる。
先にやるのは、まわりを空けることだ。
その場でやる3手
① 射線から人をどける
- 飛んでくる方向の先に誰がいるかを見ます。物より人です。
- 「こっち」と短く言って、場所を指します。説明はあとにします。
- 職員自身も、正面ではなく斜めの位置に動きます。
② 物を増やさない
- 近くにある投げやすい物を、さりげなく遠ざけます。取り上げるのではなく、まだ手に持っていない物を先に動かします。
- 机の上のかご、はさみ、コップなど、硬い物と危ない物から。
- 音を立てず、その子の視界の外で動かすほうが刺激になりにくくなります。
③ 人を呼ぶ
- 決めた合図で呼びます。大声で名前を呼ぶと、場面が大きくなることがあります。
- 来た人と役割を分けます。1人は本人、1人はほかの子、1人は記録。
- その場は最少人数にします。囲まず、その子が離れられる方向を残します。
その場の動き方の全体は他害の場面に居合わせたらにまとめています。
取り上げにいかない理由
手に持っている物を取ろうとすると、体が近づきます。
近づいた分だけ、こちらが当たる確率も上がります。
取り上げると起きやすいこと
- 次の物に手が伸びる 1つ取り上げても、まわりに物があれば続きます。
- 取り合いになる 引っぱり合いは、けがにつながりやすい形です。
- やりとりが長くなる 止める・取る・逃げるの往復で、場面が長引きます。
先に物を減らしておけば、取り上げにいく場面そのものが減ります。

見ているだけになってしまいそうで、こわいです。

見ているだけじゃないよ。
人をどけて、物を減らして、人を呼ぶ。
3つとも動いてる。止めることだけが対応じゃないんだ。
子どもより先に、物のほうを変える
同じ場面が続くなら、環境の側を見ます。
国の放課後等デイサービスガイドラインには、こう書かれています。
ガイドラインの記述
「行動上の課題を誘発させないよう、予防的な観点をもって支援を行っていくことが必要である」
「現在の行動上の課題やその行動の意味等にも着目する機能的アセスメントを行い、それを踏まえて、こどもが安心して過ごせるための環境調整」を行うこと
「感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)に留意し、安心できる環境づくりが必要である」
物の側で変えられること
- 硬い物を近くに置かない 同じ用途なら、軽い物・やわらかい物に替えます。
- 数を減らす その場面で使う分だけ出して、残りはしまいます。
- 置き場所を変える 手の届く高さから、一段上か棚の中へ。
- 窓・ガラス・機器の前を空ける 当たると危ない物の前に、動線と机を置かない。
- 逃げ場を作る その子が自分で離れられる場所を決めておきます。
落ち着ける場所の作り方はクールダウンの場所にあります。
「同じ子なのに、起きない日がある」
知恵袋に、こんな相談がありました。
思いどおりにならないと物を壊したり職員に手が出たりする子がいる。
ただ、その子なりに見通しが立っている場面では、崩れずに活動に参加できている、という内容です。
同じ子でも、起きる日と起きない日があります。
そこが手がかりです。
起きなかった日を記録する
- 何の活動だったか。人数は何人だったか。
- 直前に予定の変更があったか。
- 誰がそばにいたか。
- その日の来所時の様子はどうだったか。
起きた日だけ書くと、原因がその子に見えてきます。
起きなかった日も同じ項目で残すと、条件が見えてきます。
押さえるかどうかは、個人で決めない
体を止める形については、制度の線があります。
ガイドラインの記述
「職員が自分の体でこどもを押さえつけて行動を制限すること」等は身体拘束に当たり、運営基準により「緊急やむを得ない場合を除き、禁止されている」。
やむを得ず行う場合は切迫性・非代替性・一時性の3要件をすべて満たすことが必要で、どのような形で行うかは「設置者・管理者が組織的に決定する」ものとされています。
どこまで止めるかは、事業所として決めておくものです。
研修で聞いた話を自分の場面に落とす書き方は研修の感想の書き方にまとめています。
けが・物が壊れたあと
順番
- けがの確認 ほかの子、本人、職員。あとから痛みが出ることもあります。
- 破片・危険物の片づけ ガラスや部品は、子どもを入れない状態にしてから。
- 報告 その日のうちに。物が壊れただけでも報告します。
- 家族への連絡 事業所の判断で行います。自分で決めません。
ガイドラインには「事故の種類を問わず、家族には、事故が発生した場合は必ず連絡を行い」とあります。
ヒヤリハットの書き方はこの記事に、
職員がけがをしたときの扱いは労災の考え方にあります。
記録に残すこと
書き方の例
- 「14時50分、宿題の場面。消しゴムを2回投げた。直前に『あと5分』と伝えていた」
- 「机の上のかごを先に片づけた日は、投げる場面がなかった」
- 「予定が変わった日に多い。前日に伝えられた日は落ち着いていた」
場面・直前の状況・そのあと。人ではなく条件が並ぶと、次の環境調整に使えます。
記録の言い回しは支援記録の例文100選にあります。
よくある質問
Q. 「投げたらだめ」と伝えるべきですか。
A. 伝えるなら、落ち着いてからです。飛んでいる最中の説明は届きにくく、やりとりが長くなります。
Q. ほかの子がまねをします。
A. その場面で注目が集まっていることがあります。ほかの子を先に別の場所へ動かすと、まねの材料が減ります。
Q. 職員が当たってけがをしました。言い出しにくいです。
A. 小さなけがでも報告します。報告がないと、あとから痛みが出たときに扱いが難しくなります。
Q. 保護者にどう伝えればいいですか。
A. 事業所として伝えます。伝えるときは「投げました」ではなく、場面と、こちらが変えたことをセットにします。
Q. 危ない物を全部片づけたら、活動ができません。
A. 常時ではなく、崩れやすい時間帯だけ減らす方法もあります。帰りの前、予定が変わった日など、条件を絞ります。
まとめ
この記事のポイント
- ① その場は射線から人をどける。物を追いかけません。
- ② 取り上げにいかない。近づくほど当たりやすくなります。
- ③ 子どもより先に、飛ぶ物の数・硬さ・置き場所を変えます。
- ④ 押さえる形は個人の判断でしません。3要件と組織的な決定があります。
- ⑤ 記録は起きた日だけでなく、起きなかった日も同じ項目で残します。

物が飛んだ場面で固まるのは、誰も傷つけたくないからだ。
止められなくても、人をどけたなら、それで役割は果たしている。
今日のあなたに、はなまる。
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