放デイで子どもが話しかけてこない…嫌われているのか?と思ったときに知っておきたいこと【現場目線】
名前を呼んでも、こちらを見ない。
話しかけても、返事がない。
そして、いちばん刺さるのがこれです。
ほかの職員には話しているのに、自分には話さない。
嫌われているのかもしれない、と思う。
検索しても、上位に出てくるのは同じ悩みの書き込みばかりで、答えが出てきません。
この記事は、そこに正面から書きます。
先に結論
① 話しかけてこない=拒否とは限りません。
② 国のガイドラインには、「話さないこどもとみなさない」という趣旨が書かれています。
③ 関わりには順番があります。まず「同じ空間にいる」から。
④ 言葉以外の方法があります。指さし・カード・身振り。
⑤ ガイドラインでは「特定の人との関係性を軸に、周囲との関わりを拡げる」とされています。最初の1人になれなくても、おかしくありません。

だいち先生、あの子だけ私に話しかけてくれないんです。
ほかの先生とは話してるのに…。
私、嫌われてるんでしょうか。

それ、いちばんこたえるやつだよね。
でも、その見え方には理由がある。
国の資料に、そのまま書いてあるんだ。
「ほかの職員には話すのに」の理由
ここから話します。
ガイドラインには、強い不安や緊張を示すこどもへの支援について、こう書かれています。
ガイドラインの記述
「特定の人との関係性を軸に、周囲の人との関わりを拡げていくとともに、活動内容や環境の設定を創意工夫し、情緒の程よい表出を促すことが必要である」
「安心感のある肯定的な関わりを大切にするとともに、少人数でゆったりと落ち着いた受容的な環境を用意することが必要である」
特定の人との関係性を軸に、と書かれています。
つまり、まず誰か1人との関係ができて、そこから外へ広がっていく形です。
いま話している相手が、その軸になっている人です。
あなたはまだ軸ではない、というだけです。
これは、嫌われていることとは違います。

順番の問題、ということですか。

そう。全員が同時に軸になることはない。
それに軸は入れ替わる。
半年後にきみが軸になっていることも、普通にあるよ。
話さない=話せない場面がある、かもしれません
ガイドラインには、もうひとつ大事な記述があります。
場面緘黙(ばめんかんもく。ある場面では話せるのに、別の場面では話せなくなる状態)についてです。
ガイドラインの記述
「話さないということだけに着目して、話すことを強制したり、話さないこどもとみなしたりするのではなく、こどもの心理的な要因や環境的な要因等により、他の場面では話せているにもかかわらず、場面によっては話ができないという状態であることを理解した上で支援に当たることが必要である」
「こどもの緊張や不安の緩和を目標にして、こどもの意思が表出しやすい場面を設け、指さしやカード、身振りなど言葉以外の方法でコミュニケーションを取れるよう工夫することが必要である」
読んでほしいのは、前半です。
話さないこどもとみなさない、と書かれています。
ここは大事なので、はっきり書きます
- この記述は、職員が見立てをするためのものではありません。
- 「あの子は場面緘黙かもしれない」と職員が判断するものではありません。
- 知っておくのは「話さない理由は、こちらを嫌っていること以外にもある」という一点だけで足ります。
- 気になることがあれば、児発管や管理者に相談してください。
関わりの段階を、並べてみます
いきなり会話を目指すと、毎日が空振りに感じます。
段階に分けると、動いたところが見えます。
関わりの段階
- ① 同じ空間にいる(同じ部屋にいて、嫌がられていない)
- ② 目が合う・こちらを見る
- ③ 近くに来る(あるいは、離れなくなる)
- ④ 物を介したやり取りがある(渡す・受け取る・一緒に使う)
- ⑤ 言葉以外の返事がある(うなずく・指さす・首を振る)
- ⑥ 言葉が出る
順番どおりに進むとは限りません。行ったり来たりします。①のまま何ヶ月も、ということもあります。この並びは、今日どこにいたかを見るための目盛りで、進度表ではありません。
今日からできること5つ
どれも、こちらの動き方を変えるだけです。
試せること
- ① 話しかける回数を、いったん減らす 意外に思えますが、返事を求める回数が多いほど、その場が答えを迫られる場になります。
- ② 正面に立たず、横に座る 向かい合うと、視線を返すことが必要になります。横なら同じものを見ていられます。
- ③ 質問をやめて、実況にする 「何してるの?」ではなく「赤いの、集めてるね」。返事が要らない言葉です。
- ④ 選べる形にする 「どうする?」ではなく「こっちとこっち、どっち?」。指さしで済みます。
- ⑤ 言葉以外の道を用意する カード、絵、うなずくだけでいい聞き方。
5つとも、子どもに何かを求めるものではありません。
こちらの立ち位置と言い方を変えているだけです。
③の実況、そのまま使える形
「赤いの、集めてるんだね」
「そこ、静かでいいね」
「その本、さっきも見てたね」
どれも返事が要りません。見ていることだけが伝わります。
言葉以外の方法について
ガイドラインには、指さしやカード、身振りが挙げられています。
国の運営指導マニュアルにも、確認の工夫として例が出ています。
運営指導マニュアルに挙げられている例
「本人の意思を確認する工夫をしているか(例:発言が出にくい方に選択式で質問したり、目の動きや手に込められる力などで確認するなど)」
話し言葉だけが、意思の確認の方法ではないということです。
こうした視点は、5つの領域のうち「言語・コミュニケーション」と関連して考えられます。
領域の当てはめ方は5領域を現場でどう使うかにまとめています。
記録に、何を書くか
「反応なし」とだけ書くと、次の人が何もできません。
見えたことを、そのまま書きます。
そのまま使える記録の例
職員が横に座って活動の様子を実況したところ、視線がこちらに向く場面が2回あった。声かけへの返答はなかった。
「どちらにしますか」と2つから選ぶ形で尋ねたところ、指さしで選び、そのまま最後まで取り組んだ。
同じ部屋で過ごし、離れる様子は見られなかった。前回は別室で過ごしていた。
どれも「できた・できない」で書いていません。
何をして、何が見えたかを書いています。

「反応なし」って、いつも書いてました…。
それだと、何も残らないんですね。

反応が無かったんじゃなくて、言葉が無かっただけかもしれない。
視線が動いた、離れなかった、指をさした。
それ、全部あったことだよ。
記録の言い方は支援記録の例文100選にも場面別の例があります。
あなたの気持ちのほうも
ここまで、子どもの側の話をしてきました。
でも、この記事を読んでいる理由は、たぶんそこではありません。
自分が嫌われているのではないか、というつらさのほうだと思います。
その感じ方は、おかしくありません。
毎日顔を合わせて、毎日反応がなければ、そう思うのが自然です。
ただ、それを1人で抱えると、関わり方が硬くなります。
硬くなると、さらに届きにくくなります。
「あの子との距離感で迷っています」と、誰かに言葉にしてみてください。
それは弱音ではなく、支援の相談です。
よくある質問
Q. 名前を呼んでも反応がありません。呼び続けたほうがいいですか。
A. 回数より、返事が要らない言い方に変えてみてください。名前を呼ぶのは「返事をする」ことを求める形になります。
Q. 無理に話しかけないほうがいいのでしょうか。
A. 話しかけないのと、返事を求めないのは別です。実況のような、返事の要らない言葉なら続けて構いません。
Q. どのくらいで変わりますか。
A. 期間は分かりません。数日のこともあれば、年単位のこともあります。期限を決めると、こちらが苦しくなります。
Q. 場面緘黙かどうか、保護者に聞いてもいいですか。
A. 職員から見立てを持ち出さないでください。気になることは児発管や管理者に上げるのが先です。
Q. ほかの職員に「あの子と関われていないね」と言われました。
A. 関われていないのではなく、段階が①や②にいるだけかもしれません。何をしたか・何が見えたかを記録に残しておくと、説明できる形になります。
まとめ
この記事のポイント
- ① 話しかけてこない=拒否とは限りません。
- ② ガイドラインには「話さないこどもとみなさない」という趣旨が書かれています。
- ③ 特定の人との関係性を軸に、周囲へ拡がるとされています。最初の1人でなくても、おかしくありません。
- ④ 関わりは①同じ空間にいる → ⑥言葉が出るの目盛りで見ます。進度表ではありません。
- ⑤ こちらの動き方を変える=回数を減らす/横に座る/実況にする/2択にする/言葉以外を用意する。
- ⑥ 記録は「反応なし」ではなく、何をして何が見えたか。
- ⑦ 見立ては職員がしません。気になることは児発管へ。

反応がないのに毎日声をかけ続けたのは、その子を見ていたからだ。
見ていない人は、話しかけてこないことにも気づかない。
軸は入れ替わる。今日じゃなくてもいい。
今日のあなたに、はなまる。
出典
こども家庭庁「放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月)」(PDF)
厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル(令和8年6月)」
※関わり方はその子によって変わります。実際の対応は、個別支援計画と勤務先の方針に合わせてください。
1人で抱えないために
▶ 相談できる先輩がいないとき 聞く相手を4つに分ける方法をまとめています。
▶ 放デイ職員の悩み まとめ 6つに分けて、いまのしんどさから読める地図です。
▶ 言うことを聞いてもらえないとき 「なめられている」と考える前に見る3つを書いています。
▶ 支援員のミカタの公式LINE 「こんな場面で困った」を送ってもらえれば、記事にすることがあります。
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